ロストロポーヴィチ! (アレクサンドル・ソクーロフ)
イメージフォーラムでやっている映画「ロストロボーヴィチ 人生の祭典」を観てきました。
この映画はアレクサンドル・ソクーロフが今年亡くなった世界的なチェリスト、ロストロポーヴィチとその妻で国民的なオペラ歌手ヴィシネフスカヤをドキュメンタリーで追った映画です。
僕は、ロストロポーヴィチというチェリストが大好きで、今年の訃報が大変ショックだったのですが、それを予感していたかのようなソクーロフの映画製作には大変驚かされました。
彼は何かを感じていたのでしょうか。。。
ソクーロフ監督は、僕の好きな映画監督の一人で、前作の「太陽」でイッセー尾形さんが昭和天皇役を演じたことでも知られていますが、僕は十数年来のファンで、当時は日本ではあまり知られた監督ではなく、今は亡き六本木の「シネ・ヴィヴァン」という映画館でロシア映画フェスティバルというような怪しげなイベントがあり、彼の作品「セカンド・サークル」を観たのが思い出されます。
独特のカメラワークと色彩、そして思想を表現する監督です。
ドキュメンタリータッチの映画は時として単調な進行とカメラワークがテレビではない映画館という大きな表現媒体にマッチせずに、眠気を誘うものがありますが、ソクーロフ監督の色彩とカメラワークは、映画に独特の陰影を与え、反体制として扱われロシアを追放され、生涯どこの国に属することもなく世界市民として生きたロストロポーヴィチの波乱に満ちた人生を表現しているようでした。
一音楽家として映画を観た時に、もう少し深くえぐってほしかった部分、もう一歩音楽的に深く踏み込んでほしかった部分などの不満はやや残りますが、それを差し引いても素晴らしい映画だったと思います。
なによりも、音楽家として、表現者として、芸術家として生きることへの「情熱」と「使命感」、「宿命」のようなものが、ロストロポーヴィチとヴィシネフスカヤを通してひしひしと伝わってきます。
「音楽の扉を開くのは天から与えられた才ではなく、つも情熱が扉を開く。」
「芸術家は、日々何を聴き、何を見て、何を歌うか、それが作品を作り上げていく。」
のような言葉がとても印象深く残っています。
そして、この映画を観たもう一つの収穫はヴィシネフスカヤ!
声楽科を出ながら恥ずかしながら僕はこの歌手をロストロポーヴィチの妻で偉大な歌手だったらしい。。ぐらいの知識しかなかったのですが、素晴らしい歌手でした。
彼女は専門教育を受けたことがないらしく、オペラ歌手としてはちょっと考えられないような経歴をもった歌手です。
彼女の音楽に対する愛情や情熱は本物でした。
この映画では、主にヴィシネフスカヤが後進の指導にあたる場面、レッスン風景が多く映し出されていたのですが、彼女が生徒が歌っているのと共に声を出さずに歌い演じながら指導していく姿を見ているだけで涙が出てきました。
声を出さずとも彼女がいかに一流の歌手であったか、一流の女優であったかをかいま見ることができました。
声を出さずとも、歌わずとも、そのオーラと品格で表現してしまう。。。
表現とはパッションと生き方だなと深く思い知らされました。。。
映画全体としてのまとまりや編集のことを考えると、それほど高い評価がされる映画ではないのかもしれませんが、世の中にとってとても大切な映画だと思います。
必ずしも映画としてまとまっていること、高い評価をされるように映画をまとめていくことが、世の中にとって大切な作品となるわけでありませんね。
この映画からとても多くのことを学び、感じました。
ロストロポーヴィチとヴィシネフスカヤの情熱、愛、人となり、飾らない愛嬌たっぷりの人柄、毅然とした態度で向き合う姿勢。
音楽家として、表現者として、芸術家として、人として、大切なものがたくさん詰まっている作品でした。
もう上映修了間近なようです。
あさって金曜日までの上映です。もし、渋谷、表参道近辺でお時間のあるかたはぜひ!