ボイストレーニングOnline

5. 声が良いとはどういうこと???


前回の「真実を深く届ける俳優のための発声法」で質問をいただきました。まず、今回はそこからはじめたいと思います。

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Q: トムクルーズとアルパチーノの声がどう言う風に良かったのか?
日本人がおろそかになっていると思うのはどういうところでそう思ったのか?
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という質問です。ありがとうございます。とてもいい質問ですね。 今回はこのいただいた質問も踏まえて進めて行きたいと思います。

まず、最初に簡単に述べてしまうと、トム・クルーズやアル・パチーノの声がどのように良いのかというのは『素直で、柔軟で、よく鍛えられている』と いうことです。 そして、『声というものを表現手段としてとても大切なものであると考え 訓練している』ということです。

要は『声に対する意識と技術の』違いです。こういったところが決定的な違いなのです。彼らの声は、怒ったときには腹の底から張り上げ、瞬時に場を緊張させま すし、たとえささやいているときでもしっかりとマイクに声は乗り、聴きの心に深く届けます。これがプロのテクニックです。このテクニックはしっかりとしたメソッド(方法)さえあればさほど難しいことではないのです。そして、彼らは深い想いをテクニックによって一層相手へ深く届けるということを心がけています。これが意識の違いです。

『深い思いがあればテクニックなどいらない!』
これは本当にごくごく一部の天才にのみ通用する言葉で、我々がこの言葉を真に受けると二流三流の表現者になってしまうのです。ロバート・デ・ニーロですら、アル・パチーノですら想いを伝えるための方法を大切にしているのですから、私達はなおのことですよね。
深い思いもなくテクニックに頼る表現者は私達の目指すものとは全く別のものですから、ここでは敢えて触れずにおきます。

では、そのテクニックについて少しお話を進めます。前回のメールマガジンでもお話したように、話声や日常生活で我々は驚くほどの音域の声を使っていますし、様々な音色を無意識に使い分けています。笑ったり、驚いたり、怒ったり・・・などなどです。

一般的に劇団などをはじめとする俳優養成コースでは、俳優のボイストレーニングは単音のみで進められることが多いようですが、これだけではかなり無理が生じるというのはみなさんもうお分かりですね。今はもうだいぶ少なくなりましたが、単音のみで「アエイオエオアオ」のような声出しの繰り返しという舞台発声の練習方法があります。この発声方法では声や筋肉をある一定の場所で緊張させ、不自然な声を作り出してしまいます。しかし、まだこういったメソッドがかなり生き残っているのも現実です。

こういった発声は得てしてある一定の音域のみが不自然に張りのある、悪い意味での『役者声』を生み出します。普通のしゃべり声は必要以上に(耳ざわりに)響くのですが、大切なシーンでささやいたときは芯のない声でマイクに届かない、舞台に響かない。何を言ってるのか聞き取りづらいとういような声になってしまいます。こういった声は観客にストレスを与えます。みなさんもテレビや映画などで周りの役者さん達から極端に浮き、調和を乱す舞台俳優さんの声や演技を見たことがありませんか?

これは全く逆でないといけませんよね。普通の声は柔軟で、周りの役者さんの演技と調和がとれ、とけこめる。それなのに、声を落としてささやいた大切なシーンでは、落とした声なのに芯があり、しっかりと聞き取れ相手に深く届く。また、怒りを表したときはしっかりと声が腹に落ち響き渡り、場に緊張感を与える。というように。このメリハリが俳優の存在感を一層高めるのです。素晴らしい役者さんが一人いるだけで駄作がいい映画になってしまったりすることも多々あります。

よく私達の間で『破滅に向かって努力する』という言葉を使うのですが、いくら努力しても間違った方向に努力してしまうと、マイナスの方向に努力してしまいます。『破滅に向かって努力』してしまうのです。こんなバカらしいことはありませんよね。

まただいぶ長くなってきてしまいましたので、今回はこの辺にさせていただいて、次回はこの『破滅に向かって努力する』というお話から、『どうすれば正しい方向に向かって努力』出来るのかということについてお話させていただきたいと思います。

ありがとうございました。


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